Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
当研究の目的は、量子重力理論の候補である超弦理論の非摂動的な振る舞いを明らかにすることである。我々はその超弦理論における非摂動的な性質が顕著に現れる対象物、即ち理論のソリトン解であるDブレインの生成・消滅の過程を記述するSブレインについて解析を行ない、その結果、以下のような知見を得た。本研究では、超重力理論における時間依存するブレイン解について考察した。既知の時間依存する超重力理論のブレイン解であるSブレイン古典解の持つブレイン解釈を阻害する欠点を指摘し、Sブレイン古典解の拡張を行なった。具体的には、Wick回転の処方箋により、時間依存するブレイン解を構成した。この構成された時間に依存する重力古典解は、ISO(p)×SO(1,8-p)対称性を持つものとしてはもっとも一般的な解であり、時間のみに依存するブレイン解としてもまたもっとも一般的な解であった。この解はその解空間の中にSブレイン古典解や、他の様々な時間依存するブレイン解を含んでいたが、BPS極限に対応するブレイン解は除外されていた。その構成した解空間の中から、背景タキオンをある値に固定することにより、超重力Sブレイン解の持っていた欠点、すなわち裸の特異点を持たない解を同定した。その解はちょうど、時間依存しないブレイン解においては有限温度のblack p-bran解、またはdilatonが無い場合にはReisnner-Nordstrom解をWick回転したものに相当し、またこの因果構造は、裸の特異点を持たないSブレイン解として唯一知られている、4次元のEinstein-Maxwell理論におけるSO-brane解と同一のものであった。このように、Reisnner-Nordstrom解などとは異なり、構成した解はRR chargeを帯びながらも極めて単純な因果構造を持っており、そのことにより構成した時空全体をflat space内におけるブレインと反ブレインの生成・消滅の過程と解釈することができた。現在、この解の有する複数の自由パラメータの物理的解釈をめぐって、当研究は進行中である。