Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
Pauson-Khand型反応は化学量論量あるいは触媒量の金属錯体を用いたアルキン、アルケン、一酸化炭素の[2+2+1]付加環化反応であり、有用なシクロペンテノン骨格を一段階で合成できるため注目を集めている反応である。しかし分子内Pauson-Khand反応については数多くの触媒反応が報告されているのに対し、分子間Pauson-Khand反応の触媒化は大きく立ち遅れていた。つまり、用いることのできるアルケンが非常に限定的で、エチレンガスやひずみのかかったアルケンに限られるという制約があった。また反応自体の位置選択性が低いという欠点も有していた。したがって、一般的な触媒的分子間Pauson-Khand型反応の開発は強く望まれている。分子間Pauson-Khand型反応の反応性の低さは、アルケンの触媒金属への配位力が弱いためにメタラサイクル中間体が形成しにくい事に起因すると思われる。そこで我々はアルケンヘ着脱可能な配位性制御基(removable directing group ; RDG)を導入すれば、RDGの配位隣接効果により、メタラサイクル形成が促進されるのではないかと考え、RDGとして2-PyMe_2Si基を用いて触媒的Pauson-Khand型反応を試みた。触媒の検討を行った結果、Ru_3(CO)_<12>が触媒として適していることが明らかとなった。そこで、触媒量のRu_3(CO)_<12>を用いて1atmの一酸化炭素雰囲気下、ジメチル(2-ピリジル)ビニルシランと種々のアルキンを作用させたところ、脱シリル化したシクロペンテノンが良好な収率で生成した。これは目的の分子間Pauson-Khand型反応が進行した後に系中の微量の水により脱シリル化した結果であると考えられる。末端アルキンも内部アルキンも共に適用可能で、それぞれ対応するシクロペンテノン誘導体が得られた。また、ビニル基のα位またはβ位に置換基を有するアルケニル(2-ピリジル)ビニルシランを用いても反応は進行し、対応する二置換、三置換シクロペンテノンを与えた。2-PyMe_2Si基を着脱可能なdirecting grup(RDG)として用いることで、従来困難であった、ひずみを有さないアルケンを用いた触媒的分子間Pauson-Khand型反応が可能となったばかりでなく、従来は触媒的分子間Pauson-Khand型反応では困難であった、多置換シクロペンテノンの一段階合成が可能となった。
All Other
All Publications (6 results)