Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
RECKはその過剰発現によりK-Rasによる形質転換を抑制する分子として、申請者の所属する研究室において発見された細胞表面糖タンパク質である。その後の解析から、RECKは細胞外膜に結合するという特徴を持ったマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害因子として細胞外マトリックスの制御に深く関わることが明らかにされつつある。ほ乳類発生時におけるRECKの機能については、これまで遺伝子欠損マウスを用いた解析が行われており、RECKが胎生10.5日付近に起こる血管新生やマトリックス組織の成熟に必須の分子であることが示されている。一方で、このマウスが胎生10.5日に致死を引き起こすため、マウス発生後期におけるRECKの機能についてはこれまでよく分かっていなかった。申請者はin situ hybridization法を用いた解析から、野生型マウスでは発生後期においてもRECKが特徴的な発現様式を示し、特に軟骨性骨原基において強く発現していることを見いだした。さらに、軟骨分化の細胞培養系モデルとして知られるマウス胚性癌腫由来細胞株ATDC5を用いて解析を行ったところ、(1)RECKの発現はATDC5の軟骨分化に従って上昇する(2)細胞凝集が盛んに起こる分化初期の段階では、MMP活性の一時的上昇が起こり、I型コラーゲンの分解が盛んに起こる(3)分化初期段階からRECKを強制発現させるとI型コラーゲンの分解が減少し、細胞凝集が著しく妨げされる、ことなどが分かった。これらの結果から、軟骨分化には、MMPが細胞外マトリックス・リモデリングを引き起こして細胞凝集を促進する初期の段階と、RECKが細胞外マトリックスの蓄積と安定化に寄与する後期の段階の2段階が存在することが示唆された。従って、RECKおよびMMP発現の時期特異的な制御が骨発生に重要であると考えられた。