Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
前年の研究報告書で2種類のボンベシン様ペプチド受容体(GRP-RとBRS-3)のどちらかの遺伝子が欠損したKOマウスに対して摂食関連ペプチドを投与して摂食量を測定する実験を行い、BRS-3 KOマウスでmelanin-concentrating hormone (MCH)の摂食促進作用が約2倍に増強されている旨を記した。その後、定量的PCRの結果、BRS-3 KOマウスの視床下部では、MCH、MCH受容体ともに過剰発現していることが分かった。これらの結果は、BRS-3がMCHニューロンあるいはMCH受容体含有ニューロンに対して重要な働きを担う可能性をしめしており(投稿準備中)、今後、血糖感知の下流のこれらのネットワークへどのような情報伝達がなされるのか検討する必要がある。また、BRS-3は血糖以外の栄養素のひとつである遊離脂肪酸の感知に関連があることも明らかにした。すなわちBRS-3 KOマウスの脳内に遊離脂肪酸であるoleic acidを投与したところ、正常マウスであれば摂食量が減少するところ、ほとんど減少が見られなかった。BRS-3 KOマウスは血中の遊離脂肪酸濃度も亢進しており、脳による脂肪酸感知とBRS-3に深いつながりがあることが明らかになった(投稿準備中)。一方、前年の研究報告書でも述べたように、新規鳥類ボンベシン様ペプチド受容体chBRS-3.5mRNAのin situ hybridizationを行ったところ、終脳に特異的に発現が見られ、Bombesin/Gastrin-releasing peptide免疫陽性細胞の発現部位と重複していた(2002年日本神経科学会大会にて発表)。これらのデータをもとに未だ不明なchBRS-3.5のリガンド探索を試みたのち、生理的な研究によりBombesin神経系と栄養情報との関わりを今後明らかにしたいと考えている。