Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
申請者は昨年度、イネMADSボックス遺伝子、RMD1が胚発生過程において胚最外層に発現することを明らかにした。今年度はRMD1遺伝子の機能解析をする目的で、RMD1過剰発現形質転換体の作出、およびイネレトロトランスポゾンTos17のRMD1座位挿入個体のスクリーニングを行った。トウモロコシユビキチンプロモーターの下流にRMD1cDNAを結合させた融合遺伝子を形質転換用ベクターに組み込み、アグロバクテリウムを介した形質転換を行い、47個体の独立した形質転換体を得た。内およそ半数の個体の小穂に1)内穎の退化、2)護穎の異常伸長、3)小花の増加といった形態変化が見られた。RMD1cDNAをプローブに用いたノーザン解析の結果、1では弱く、3で最も強くRMD1の過剰発現量が見られた。また、茎頂や腋芽の分裂組織に特異的に発現し、分裂組織の分化・維持に関わっていると考えられているイネホメオボックス遺伝子、OSH1をプローブに用いたノーザン解析を行った結果、野生型では幼穂形成が進むに従って、OSH1の発現は弱まっていくのに対して、形質転換体ではその発現抑制が弱く、幼穂形成後期においても強いOSH1の発現が見られた。また、同プロープを用いたin situハイブリダイゼーションを行った結果、形質転換体においては野生型では見られない外穎の腋にOSH1の発現が見られた。これらの結果はRMD1の過剰発現量が小穂内の分裂組織の維持機構に作用して、形態変化を引き起こしたことを示している。また、トランスポゾンTos17タギングラインのスクリーニングの結果、RMD1座の第1イントロンにTos17が挿入した1ラインを同定した。このラインの種子を播種し、PCRによってそれぞれの個体の遺伝子型を同定した。その後このラインを育成し観察したが、Tos17のRMD1座の挿入と連鎖する形態変化は観察されなかった。