Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は、カイコ由来の培養細胞系であるBmN-4細胞におけるカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)の増殖が、アメリカシロヒトリ核多角体病ウイルス(HycuNPV)によって阻害されるという現象を引き起こす因子を同定し、その因子が持つ機能を解析することによって、この現象のメカニズム、すなわち核多角体病ウイルスの宿主特異性が決定される新たな機構を明らかにすることである。今年度はBmNPVの増殖を阻害する要因因子を同定し、その機能解析をおこなうことを目標に研究を進めた。まず、BmNPVゲノムDNAとHycuNPVのゲノムDNA断片とを用いたコトランスフェクションアッセイをおこない、要因遺伝子がコードされる領域を約2.3kbpにまで限定した。この領域の塩基配列を決定したところ、Orgyia pseudotsugata NPV (OpMNPV)のopep32遺伝子のホモログであるhycuep32が存在していた。そこでhycuep32発現ベクターを作製し、BmNPVゲノムDNAとコトランスフェクトした。その結果、BmNPVの増殖が阻害された。さらに、ep32による阻害は、ep32のdsRNAを用いたRNAiによってレスキューされた。これらの結果より、BmNPVおよびHycuNPV同時感染BmN-4細胞におけるBmNPVの増殖阻害には、HycuNPVのep32遺伝子が深く関与することが示唆された。続いてep32欠損組み換えHycuNPVを作製した。この組み換えウイルスは、ep32遺伝子のORFの部分をポリヘドリンプロモーターに制御されるlacZカセットに置き換えたものである。今後はこのep32欠損組み換えHycuNPV感染がBmNPV増殖に及ぼす影響を詳細に調査することにより、ep32の機能を明らかにし、BmNPV増殖阻害のメカニズムを解明したいと考えている。