Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は、まずアルキル化剤によるSrcキナーゼ不活性化に必須の構造を解析した。我々は、Srcタンパク質中のシステインが直接修飾を受ける事により、構造的な変化によって不活性化されるというモデルを考えている。そこで、Srcタンパク質中のシステイン残基に点突然変異を導入した変異体を作成し、アルキル化剤による不活性化の有無を調べた。その結果、6番ならびに9番のシステインが不活性化に必須である事が判明しつつある。この結果は、Src蛋白質のキナーゼ活性領域に続く末端領域が、キナーゼ活性に対してアロステリックな活性抑制機能を持つ事を示す。さて、これらのシステインは、Srcファミリーキナーゼの中でも保存されているものとされていないものがある。そのうち、6番と9番のシステインは比較的良く保存されているが、例えばLynでは6番が欠失している。そこで、今後複数のキナーゼを比較検討する事で、更に詳細な解析を行いたい。また水銀の作用との比較を行いたいと考えている。さて、我々の解析から、癌遺伝子産物のv-Srcは、Ras-MAPKシグナル伝達系を介して、細胞間質を破壊するマトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP-2)の分泌を活性化する事が判明している。この、MMP-2は癌細胞の浸潤転移に決定的であるばかりでなく、炎症や血管新生の際の組織のremodelingに重要な機能を担う事が明かになりつつある。一方、正常細胞に内在するc-Srcは、不活性の常態下では、このMMP-2分泌を活性化する機能を持たない。そこで、水銀を用いてc-Srcを活性した時、MMP-2の分泌が亢進するかどうかを検討してみた。その結果、c-Srcの活性化に伴い、MMP-2分泌が活性化される現象を見い出した。現在更にその詳細を解析中である。
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