Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究では、コンピユータを介した二者間の音楽協同創作活動と、ひとりで行う創作活動とを比較することにより、それぞれの作業プロセスの差異や、学習者がどのような支援を必要としているのかを明らかにすることを目的としている。現在音楽を専門的に学んでいない大学生を対象にメロディ編曲課題を実施し、その課題を完成させるまでのプロセスの観察調査を行った。参加者は一人、もしくは友人を連れて参加するかを選択できた。課題遂行時のやりとりはすべてビデオテープに記録され、プロトコルや非言語行動はすべてトランスクリプト化された。一人で音楽創作活動を行った参加者についての分析の結果から、課題を完成するに至った参加者は約8割と低い傾向が認められた。各参加者には、音楽創作プロセスのそれぞれの段階で生じるトラブルに答えるプログラムが用意されており、いつでもアクセス可能であったにもかかわらず、その利用はあまり認められなかった。一方、二者間で行われた協同創作活動についての分析の結果では,すべてのペアにおいて、課題を完成するに至った。参加者が互いの考えやアイデアに耳を傾けつつ創作するという行動は、音楽創作活動全般にわたり分散的に、しかし比較的頻繁に生じることが示された。なかでも「これでいいかな?」などという確認の発話が頻繁に認められ、ここで了承が得られることが次のステップへと進むきっかけとなっていることが示された.また、たとえペアから技能的に有効な答えを得られなかったとしても、疑問に答えるプログラムを活用し、ペアのうちの一方の参加者が検索手がかりを探し、もう一方が鍵盤で音を探る、といった分業体制により創作を行うといった行動が認められた。このことから、二者による協同音楽創作活動は、学習者それぞれが独自に持つ学びのプロセスを音楽の技能的な面から支援するだけでなく、相手から得られる言葉かけや賛同の言葉などが音楽創作支援の一部になっているということが明らかになってきたといえよう。
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