Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
Campylobacter jejuni腸炎後ギラン・バレー症候群(GBS)の発症機序として、分子相同性仮説が提唱されている。つまり、ヒト末梢神経に豊富に存在するGM1様構造をC. jejuniのリポ多糖(LPS)が有することから、C. jejuni腸炎を契機としてIgG抗GM1抗体が産生され、末梢神経障害を来たすと想定されている。この分子相同性の存在がGBSの発症に関与することを証明するために、実験動物にC. jejuni LPSを感作することでGBS疾患モデルの作成が過去に試みられたが、血中に抗GM1抗体が誘導されたのみで神経障害はみられなかった。近年我々は、GM1ガングリオシド感作によりIgG抗GM1抗体上昇を伴ったGBS疾患モデルの樹立に成功した。本研究ではこのプロトコールに倣い、患者から実際に分離された菌株から精製したGM1様LPSを感作することによりGBS疾患モデルの樹立を試みた。GBS患者から分離されたC. jejuni (CF 90-26)からLPSを精製した。Japanese white rabbit23羽にkeyhole limpet hemocyanin 1mg、Freund完全アジュバントとC. jejuni LPSを2.5mg(n=15)もしくは10mg(n=8)を3週に1回皮下に感作を繰り返した。IgM抗GM1抗体産生が誘導されたばかりでなく、IgGへクラススイッチした。LPSを2.5mgずつ感作した群では3羽(20%)に、10mgずつ感作した群では全例に運動麻痺が生じた。脊髄前根の軸索周囲にIgGが沈着していた。坐骨神経にワーラー様の変性像がみられた。脱髄像やリンパ球の浸潤はみられなかった。これに対して、アジュバント対照群10羽では、抗GM1抗体も誘導されず、1羽も発症しなかった。病理組織学的にも明らかな変化はみられなかった。E. coli K12、Salmonella minnesota R595のLPSを感作したウサギでも抗GM1抗体は誘導されず、運動麻痺を呈さず、病理組織学的にも異常はみられなかった。C. jejuni LPSを感作して発症したウサギの末梢神経病変は脱髄ではなく軸索変性を主体とし、C. jejuni腸炎後GBS剖検例と同様の所見を呈した。発症率は感作LPSの量に依存した。本疾患モデルは、分子相同性仮説を支持する直接的な証拠と考えられる。
All Other
All Publications (6 results)