Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
BESS実験では、超電導ソレノイド、高性能飛跡検出器、並列型高速データ収集システムより構成される高性能の汎用粒子検出器を気球により高空に打ち上げ、各種宇宙粒子線の観測を通して宇宙における素粒子現象を研究している。特に宇宙線反陽子流束は、「宇宙における素粒子現象」を研究するうえで素粒子物理学・宇宙物理学的に興味深く、その精密測定が切望されている。低エネルギー反陽子が著しく抑制される太陽活動極大期において、その絶対流束を精密に測定するには、最大のバックグラウンドである「大気で生成される反陽子流束」を精密に把握する事が必要不可欠である。これまで、このバックグランドに対する理論的ないくつかの予言がなされているが、これらは完全に正しい反陽子の生成断面積を含んでいない。なぜなら、宇宙線原子核と大気との衝突から反陽子が生成される反応断面積は地上の加速器実験から得ることができないからである。そこで本実験では、BESS測定器をもちいてCut-Off Rigidityが約4GeVのアメリカ・ニューメキシコ州において飛翔実験を行った。このフライトでは、5.0〜26.0g/cm2の大気深度において約15時間観測を行い、100事象以上の大気反陽子を運動エネルギーにして0.3〜4GeVの領域で観測することに成功し、この絶対流束を大気深度ととも解析した。この結果を用いることで、反陽子流束を解析するうえで最大の系統誤差要因である「大気で生成される反陽子流束」の不定性を劇的に低減する事が可能になった。