Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
年度の前半は雑誌論文の改訂に時間を費やした。NCEP(米国海洋大気庁)が作成している客観解析データを用いて、これまで整備してきたインドネシア高層気象観測データと同じデータセットを作成し、風速場、温度について各地点毎の比較を詳細に行なった(但し論文改訂稿への掲載は風速場のみ)。結果として、NCEP客観解析データにおける風系の季節変化は1地点を除いて観測値とよく一致していたが、上部対流圏における風速の北半球夏季極大値に2〜3m/sの差(過大評価)が見られた。温度場については上部対流圏〜下部成層圏において、過去の研究で指摘されているような+2〜3Kの差が存在するが(NCEP客観解析値の方が温度が高い)、特に北半球夏季の100hPaで差が激しく、観測データで見られるような赤道対称な構造(赤道直上で温度高)ではなく、南半球に行く程温度が高いという非対称性構造が現れていた。また、これに平行して対流圏界面高度/温度と対流圏風速場、温度場の経年変動について昨年度に引続いた解析を行なった。気象庁の定義に準拠して、Nino3 SST偏差に基づいてENSO状態を判断すると、解析期間(1992〜1999年5月)には2回のEl Nino(期間始め〜92年6月、97年5月〜98年5月)と1回のLa Nina(98年9月〜期間終わりまで)が存在する。圏界面変動は、このEl Nino期とそれ以外の時期(92年7月〜97年4月;以下Normal期と呼ぶ)で変動の様相が顕著に異なっていた。Normal期には、圏界面温度と高度が逆位相で(成層圏QBOによる準2年周期で)振動すると共に、5年間かけて約5K/1kmの温度単調減少(高度単調増加)が見られた。この間、季節変化に見られたような東西の温度差構造(90゜〜140゜Eで約2K,東インドネシアの方が低い)は保持されたままであった。一方、97/98年のEl Nino期に入ると温度・高度共に強い正偏差を持ち、この間の東西温度構造は崩れていた。他指定気圧面についても調べてみると、この温度の単調変減少は100hPa以高で現れており、温度変化率は50hPaで-0.84K/yearと最も低い。一方、150hPaより下の高度では単調上昇に転じ、200hPaで最も高くなっていた(0.23K/year)。この高度はHadley的循環の発散高度より少し下にあたる事から、Hadley的循環の年々変化に伴う補償下降強化による断熱昇温と考えられる。これら温度場についての成果はAGU(アメリカの気象学会)や国内の学会で発表し、現在雑誌投稿論文として準備中である。
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