近代日本文化における<外国人>表象と<日本人>の自己像形成
Project/Area Number |
00J05078
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
文学一般(含文学論・比較文学)・西洋古典
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Research Fellow |
斉藤 愛 筑波大学, 文芸・言語学系, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2000 – 2002
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
|
Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2002: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2001: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2000: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
|
Keywords | 外国人表象 / 異人種間恋愛 / ジェンダー / セクシャリティ / ナショナル・アイデンティティ / 東海散士 / 佳人之奇遇 |
Research Abstract |
本年度は、日本人の自己像形成に異人種との交渉がどのような影響を与えたかをジェンダーとセクシャリティの観点から考察した。対象としたのは明治初期の政治小説で、ベストセラーとなった東海散士の『佳人之奇遇』である。 『佳人之奇遇』は広範な読者に熱狂的に迎え入れられたが、その大きな要因となったのが、主人公「東海散士」に配される二人の「佳人」が白人女性であるということだった。江戸時代からの伝統的な恋愛パターンとして、「女に慕われる男」は読者に馴染み深いものだったが、女性側を白人としたことは、単に当時の「鹿鳴館的」な風潮にのったものではなく、日本人男性のアイデンティティ形成に大きな意味をもつ。それは、『佳人之奇遇』が書かれた理由であり、最大のテーマとする、欧米による帝国主義・植民地主義批判と国権発揚と、全世界的に共有されていた白人を頂点とし黒人を底辺とする差別化した階層的人種観との関係が、中国白話小説の「才子佳人」ものという枠組みをふまえた登場人物の人物造形に大きく関わっていたからである。ファノンのいう「承認としての愛」、すなわち白人女性に愛されることによって、自分が白人の愛に値する人間であることを確認するという被植民者側のアイデンティティのありかたが、地理的歴史的限定を考慮してもこの『佳人之奇遇』という作品とそれを支えた読者たちの共通認識に通底していると考えられる。 近代国家としての基礎形成にあたる時期に多数の読者を獲得した本作品は、帝国主義が世界を席巻した時代における日本人男性のアイデンティティ形成に人種主義がいかなる干渉をしたか、また、「優越人種」との性的ファンタジーがナショナルな主体に果たす役割といういまなお考えつくされていない新たな課題を提出している。 以上の過程から、ナショナリズムとジェンダー・セクシャリティの関わりをより広い視野において見直す必要が出てきた。今後の研究は主にこれらの観点から行われる予定である。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)