スピンラダー系銅酸化物におけるスピンギャップと輸送特性
Project/Area Number |
00J06203
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
工藤 一貴 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2000 – 2002
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2002: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2001: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2000: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 低次元量子スピン系銅酸化物 / 熱伝導率 / マグノン熱伝導 / 反強磁性 / 強磁性 / スピン間の交換相互作用 / スピンギャップ / ボーズアインシュタイン凝縮 |
Research Abstract |
最近、幾つかの低次元量子スピン系において、マグノンによる熱伝導κ_<magnon>の存在が指摘されており、興味が持たれている。本年度は、低次元量子スピン系における熱輸送とスピン状態の関係を調べるために、4本足梯子格子系La_2Cu_2O_5、1次元スピン鎖系Ca_2Y_2Cu_5O_<10>、3次元スピンダイマー系TlCuCl_3の単結晶の熱伝導率を磁場中で測定した。 1.4本足梯子格子系La_2Cu_2O_5 TSFZ法を用い、育成が困難と言われていたLa_2Cu_2O_5の大型単結晶の育成に世界で初めて成功した。熱伝導率は非常に異方性が大きく、b軸方向(梯子の足方向)の熱伝導率κ_bとa軸方向(梯子面に垂直方向)の熱伝導率κ_aの異方性は最大で20程度にもなった。それは、スピン間の交換相互作用Jの異方性、すなわち、κ_<magnon>の異方性として定性的に説明され、すなわち、b軸方向ではκ_<magnon>の寄与が大きいと結論された。また、この系のκ_<magnon>は非常に大きいが、それは、b軸方向のスピン相関が反強磁性的であり、かつ、Jが〜1000Kと大きいことから、マグノンの速度が速いためと考えられた。 2.1次元スピン鎖系Ca_2Y_2Cu_5O_<10> a軸方向(1次元鎖に平行方向)の熱伝導率κ_aは、T_N(30K)以下でわずかな上昇を示し、磁場を印加するとスピンフロップ磁場H_<SF>で突然ジャンプすることがわかった。この急激な変化は、熱伝導率測定がスピン状態の変化を捕捉するプローブとなることを示している。また、熱伝導率の値が小さいことから、この系のκ_<magnon>は小さいと考えられるが、それは、鎖内のスピン相関が強磁性的であり、マグノンの速度が遅いためであると理解できた。 3.3次元スピンダイマー系TlCuCl_3 ゼロ磁場における[2 0 1]方向の熱伝導率が、スピンギャップの形成される30K以下で上昇し、4K付近にピークを示すことがわかった。そのピークは、H<〜7Tまでは磁場を印加することにより抑制されるが、一方、H>〜7Tでは、再び熱伝導率が増加し、新たなピークが低温で成長することがわかった。熱伝導の増加しはじめる温度が、この系において提唱されているマグノンの磁場誘起ボーズアインシュタイン凝縮の転移温度と一致したことから、それがボーズ凝縮を反映したマグノン熱伝導の急激な増加として説明できる可能性のあることがわかった。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)