Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究では、Ds-GUS T-DNA導入イネとAc転移酵素導入イネを交配して行られるトランスポゾンタギング系統を多数作出し、イネから遺伝子、発現制御領域のクローニングと解析を行うことを目的としている。今年度は以下の実験を行った。1.Dsの転移頻度を高めるために、テッポウユリ由来のLIM10プロモーターにAcTPを連結したコンストラクトLIM10::AcTPをイネに導入し、Ds導入系統との交配を行った。LIM10::AcTPを用いた時の転移頻度は1.4%、35S::AcTPを用いた時の転移頻度は0.5%であった。LIM10::AcTPを用いることで、35S::AcTPを用いるより高頻度でDsの転移を覇導できることを明らかにした。2.転移したDsを含む38個について、隣接領域を単離して塩基配列を決定しマッピングした。転移したDsのうち、同一部位から転移した12のDsの挿入位置を調査したところ、6つ(50%)は同一染色体に転移していた。この割合は、シロイヌナズナにおけるDsの転移パターンと同程度であることから、Dsの転移パターンはシロイヌナズナとイネで同様であることが示唆された。3.転移したDsの隣接領域の相同性検索を行ったところ、17個体について遺伝子領域と相同性が見られた。これらの個体は、世代を進め、転移したDsがホモになった個体を行ることで、遺伝子の機能解析を行うための重要なツールになると考えられる。4.3個体については、GUSの発現が見られ、Dsがエンハンサーの支配下に転移したと考えられた。個体Aは穎で、個体Bは葉で、個体Cは花糸で、それぞれGUSの発現が見られた。個体Cでは、プロテインキナーゼと相同性がある遺伝子領域にDsが挿入しており、この遺伝子が花糸で発現する新規のプロテインキナーゼであることが示唆された。