Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
昨年度までに、本研究で開発した火星大気大循環モデルを用いた数値計算から、火星大気中の熱潮汐波が子午面循環の形成とダスト分布に重要な役割を果たすことを示した。本年度はこの熱潮汐波自体の特性をより深く理解するために、火星大気の線形応答モデルを新たに開発し、数値計算を行った。このモデルは、これまでに開発した大気大循環モデルの支配方程式を線形化したものである。このモデルを用いた様々な数値実験により、大気大循環モデルで計算される熱潮汐波の励起源や伝播特性を容易に理解することができる。そして、熱潮汐波自体の特性を把握することで、熱潮汐波が超高層大気に及ぼす影響についてのより深い知見を得ることができると考える。大気大循環モデルと線形応答モデルの2つの数値モデルを用いで熱潮汐波の数値計算を行った。その結果、火星大気中の熱潮汐波の主要な成分である太陽同期一日潮汐波の鉛直波長が、古典的な潮汐波の理論から予測されるものよりも約1.5倍大きいことを示した。さらに、線形応答モデルに与える条件を様々に変えて数値実験を行った結果、この大きな鉛直波長は背景大気の東西風の緯度シアーの効果によって生じていることを明らかにした。このような背景風の緯度シアーの効果による鉛直波長の変化は、これまでの研究では指摘されていなかった。大きな鉛直波長を持った波は、乱流拡散などの散逸過程の影響を受けにくいため、より高高度まで伝播しやすくなると考えられる。この効果は、熱潮汐波が火星超高層大気中で大きな変動を起こす上で重要な役割を担っている可能性がある。以上の2つの数値モデルの開発と数値計算は一昨年度に購入したワークステーションを用いて行い、データ処理には昨年度に購入したパーソナルコンピュータを使用した。また、これら2つの数値モデルによる大量の計算結果は、今年度に購入した大容量記憶装置を用いた。
All Other
All Publications (1 results)