Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
平成14年度は、前年度に引き続いて非正規様相論理の理論を展開するとともに、特に哲学理論への応用に関する方法論的検討を中心に研究を進めた結果を学会・ワークショップにて発表した。2002年6月には「様相は必然性ではない」(科学基礎論学会、東京工業大学)で、人工知能などさまざまな分野への様相論理の応用が進展する一方で、哲学的限界の打開という問題に対してはいまだに試行錯誤が続いている状況への対策として、ともすれば狭義に捉えられ必然性と同一視されることすらある様相概念をより広い文脈で捉えなおす必要があることを論じた。2002年11月には"Non-monotonic modalities : philosophical motivations and applications"と題する講演(京都科学哲学コロキアム、京大会館)を行い、哲学的論理学という学問分野全体における様相論理の理論と応用の位置づけに関する方法論的考察を示した。さらに、2003年2月には講演"Beyond bare monotonicity"(言語・行為・認知ワークショップ、北海道大学)を行い、特に言語行為にまつわる概念を様相論理を用いた哲学的論理学のアプローチで処理した場合のパラドクス現象に注目することにより、非正規様相論理に焦点を当てた場合においても応用の目的にあわせて適切な意味論と論理体系を提示することの重要性を強調した。また、2003年3月の講演「様相アプローチ検討」(名古屋哲学フォーラム、南山大学)では、それまでの研究で明らかになった問題を解決するために「言語行為では最大情報をもたらさなければならない」(最大情報性仮説)を提案するとともに、最大情報性を様相論理の枠組で把握するための予備的考察として階層化された可能世界を認めるべきであるという「分割主義」の考え方を新たに提示した。また理論的背景となる「様相論理」「不完全性定理」「自己言及」について、『AI事典』(土屋俊他編、共立出版)項目として執筆し、人工知能の基礎研究としての論理学の応用可能性について論じた。
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