Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
体節中胚葉の分節化は、脊椎動物のからだの繰り返し構造をつくりだす上で重要な発生現象のひとつである。しかしながら、未分節体節中胚葉(体節板)が、前方から左右一対ずつ規則的にくびり切れていく分節化機構は、未だに明らかになっていない。本研究は前年度までに、分節化誘導現象がNotch受容体を介する細胞間情報伝達により誘導されることを明らかにしている。今年度はこれまでの研究成果をまとめ、雑誌論文として発表した。またさらに分節化誘導シグナルについて詳細に解析した。前年度までの研究から、正常な分節化過程において、分節化誘導能は予定分節部位(以下「レベル-1」と呼ぶ)のみに現れることがわかっている。レベル-1に位置している細胞は、どのようにしてこの誘導能を獲得するのだろうか?この疑問に答える手がかりを得るため、本来は境界を形成しない領域の組織をレベル-1の環境下へ移し、影響を調べた。その結果、移植片はホスト胚と同じ位置で分節境界を形成した。移植片の腹側には、完全に除去することができなかったホスト胚の体節組織が残っていた。ホスト胚の体節組織を完全に除去できた場合には、移植片に分節境界は形成されなかった。これらの結果から、レベル-1の腹側部位には、その背側に分節境界を誘導する何らかの活性が存在している可能性が示唆された。レベル-1の腹側部位がその背側に分節誘導することを直接的に検証するため、レベル-1の腹側部位のみを取り出し、境界を形成しない領域へ移植した。その結果、異所的な分節境界が背側に誘導された。すなわち、腹側から背側に向かって分節誘導が起こることが証明された。しかし、レベル-1の背側部位を移植片として用いた場合にも同様の分節誘導活性を示したことから、腹側部位のみが特別な誘導能を有しているわけではないことが判明した。異所境界は必ず移植片の背側のみに形成され、腹側には形成されないという特徴を示した。つまり分節化誘導シグナルは、腹側から背側へ一方向に伝わるという性質を持つことが明らかになった。
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