Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
重い電子系ウラン化合物URu_2Si_2のT_o=17.5Kにおける相転移の秩序変数及びそれと競合する不均一反強磁性のメカニズムの解明は、重い電子系物質群における中心課題のひとつであり、世界的にも精力的に研究されている。これまで我々は一軸応力下中性子散乱実験を行うことによって、この反強磁性相が一軸応力の印加によって著しい増大を示し、さらに強い応力方向依存性を示すことがわかった。つまり、結晶の軸方向によっては、わずか数キロバールの一軸応力によって反強磁性体積比が百倍程度の大きさに増強されるのに対し、それとは異なる軸方向の応力に対してはモーメントの大きさを変えないという実験事実を明らかにした。これらのことから、未知の秩序相から反強磁性相への相転移は正方晶の格子定数比の増大で引き起こされていると考えられる。今回我々はこの結果を実証するために、異なるイオンで置換し格子系を制御した系での中性子散乱・ミュオンスピン緩和実験をおこなった。その結果、Rh置換系U(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2においてわずか数パーセントのRh置換によって反強磁性相が誘起することを明らかにした。この系ではこれまでRh置換によって格子定数比が増大することがわかっており、その程度も一軸応力印加による格子定数比の増大と同程度であることから、Rh置換系においても反強磁性相の誘起は格子定数比の増大によるものであると考えられる。さらに、置換系の実験においてはこれまでの圧力実験とは異なり圧力セルの使用に起因する実験データのノイズを気にせずに高い精度で実験をおこなうことが可能であり、現在詳細な解析をおこなっているところである。
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