Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
1.前年度から引き続き神経細胞の電気的振る舞いを模擬するシリコンデバイスの検討を行った。神経が他の神経細胞から興奮性の刺激を受けるとその細胞膜の電位が上昇する。これは細胞膜の内外に存在するイオンの移動によって生じる。本研究ではこれまで一種類のイオンによる神経デバイスを構成した。これは半導体中の少数キャリアを利用したものである。今年度は神経の電位変動に大きく影響を与えるNaイオンとKイオンの二つのイオンを少数キャリアに対応させ神経を模擬するデバイスの提案を行った。少数キャリアを発生させるPNPNダイオードと細胞膜に相当する絶縁体によって二つのイオンの移動を模擬することができた。このデバイスを作成するための半導体プロセスを検討している。2.これまで本研究で検討してきた単電子ニューロン回路は熱雑音に非常に弱い。それはニューロンに確率性や離散出力を持たせるために電子一個のトンネリングで論理を判定するためである。そこで今年度はより熱雑音に強い方式として、クーロンブロッケード現象を利用しない、熱雑音による電子トンネリングを利用したニューロン回路を提案した。単電子回路は有限温度において電子のトンネリングが起きるが、バイアス条件によってトンネリングの頻度が変化する。そこで、バイアス電圧を制御することによってニューロンの確率性を制御しボルツマンマシンニューロンに用いることができることを確認した。提案したデバイスは温度100K以上の単電子回路では高温で動作することから、CMOS回路などと組み合わせて使用することができる。本研究ではバイアスを制御する回路としてCMOSのオペアンプと乗算器を利用した回路構成を提案した。