Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
1.今年度も、直接の研究対象時期である日清戦後(1895〜1903)に期間を限定せず、第二次大戦後の五五年体制形成期までの政党政治の足跡を視野に入れ、幅広い観点から文献や史料の調査を行った。具体的には、国立国会図書館憲政資料室や徳富蘇峰記念館(神奈川県二宮町)、福岡市立博物館で、政治家の書翰を中心とする原史料の調査を行った。昨年度と同様、本年度も研究に利用できる史料を数多く見つけることができた。とりわけ、福岡市立博物館で調査した鍋島直彬宛書翰(「鹿島鍋島家文書」所収)によって、日清戦後から明治末年にかけての貴族院議員の政治ネットワークを解明する一端が得られた。2.日清戦争前と戦争下に行われた二度の総選挙を、自由党と敵対した対外硬派の視点から分析し、その成果を今年度の日本選挙学会の研究大会で報告した。本報告では、現職代議士の不出馬による不戦敗などの事例を踏まえ、対外硬派が党勢拡大に失敗した理由のひとつとして、組織力の弱さという論点を打ち出した。この報告原稿を土台に、データの補充を行い、活字化する準備を行っている。3.今年度は、日清戦争前後に対外硬派の一角を占めた立憲革新党の動向を、ジャーナリスト徳富蘇峰の政治戦略と絡めて分析した。そして、責任内閣と自主的外交という政治理念を共有する徳富と立憲革新党は、同党の長谷場純孝を介して密接な関係にあったことを明らかにした。その成果は、鳥海靖教授の古希記念論文集(吉川弘文館より刊行)に掲載される予定である。4.西欧列強による半植民地が進む中国情勢に即応するためにも、衆議院の過半を占める強固な一大政党の結成が必要だという論理も、明治33(1900)年に立憲政友会が結成されていく過程で無視し得ない論理であることが明らかになった。このように、外交問題は、政界再編の流れを加速させる上で重要な役割を果たすのである。
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