Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
喜多流九世七大夫古能(1770〜1829)の関係する資料について、引き続き調査および写真撮影等を行った。神戸女子大学蔵『謡忌詞』は、観客の氏名や領地名に配慮して当座的に謡の詞章を変更するもので、同様の考えは同時代の観世流十五世大夫元章の著述にも見られるところであり、当時の家元による著作活動の特徴を示している。また、この問題について、古能の伝書『難波の春』をもとに、同人が元章の活動を意識していたことに関する考察を発表した。次に、「伊勢猿楽」に関する調査を行った。これは、中世以来伊勢神宮の祭礼行事の一部として伝承されてきた能が、近世後期に及んで喜多流の中に組み込まれて今日に至るもので、家元制度の浸透に関する興味深い事象である。調査の結果、同所に残される伝書の記述には、ある時期から喜多流伝書の影響が色濃く現れるなどの知見を得た。かかる問題については、継続して研究を進めていく。その他、1,2年目の作業をもとに喜多古能の足跡について総合的に把握するべく資料調査と考察を行った。
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