Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
2002年度は、これまでの研究と同様,イスマーイール派と10世紀に同派から分派したドゥルーズ派の研究を主に行った。日本学術振興会特別研究員として最後の3年目を迎えるに当たり,本年度の研究は過去3年間の総決算となった。 イスマーイール派やドゥルーズ派が属するシーア派は,イスラーム史においては常に少数派であり続け,そこでは少数派故の独自の思想が形成されている。そのような思想の例としては,多数派のスンナ派とは対照的な極端で劇的な終末論,その終末論と有機的に結びついた宇宙創成論,他の分派にはあまり見られない輪廻論などがある。本年度は,このような思想体系の歴史的成立過程と並んで,現在の信徒たちがマイノリティとして位置づけられる現状の視点からいかに自分たちの独自思想とその歴史を位置づけたかを主に分析した。このような研究方針は,「シーア派思想研究とその問題点」『思想』2002年,9月号においてある程度の成果をおさめることができた。この研究論文では,先ずは,シーア派研究史を概括し,その傾向と問題点を指摘した後,原理主義(イスラーム主義)の傾向が強まり,マイノリティに対して抑圧的になったパキスタンにおいて,現代のイスマーイール派支配エリートたちが,自分たちの独自の思想と歴史をいかに再解釈したのか,を分析した。また,『イスラム世界』59号に執筆した書評「子島進著<『イスラームと開発:カラーコラムにおけるイスマーイール派の変容』>」は,人類学と開発の視点から現代イスマーイール派を分析した著作を扱った。このように今年度の研究は現代を視野に入れたものになっている。 本年度はイスラーム一般にも視野を広げ,多くの原稿を執筆した。2002年度に刊行された『岩波イスラーム辞典』岩波書店,『新イスラム事典』平凡社,『イスラーム世界事典』明石書店ではそれぞれ51,3,6項目を執筆している。執筆した現行の内容は,イスマーイール派やドゥルーズ派の他に宗教一般,神学,哲学,スーフィズム,現代思想と多岐に渡る。さらに,2003年中に刊行予定の後藤明・山内昌之編『イスラームの知101』新書館には,「異教徒」,「異端」を,岡本さえ・折居善果・加藤祐三・衣笠正晃・小池光秀・吉田島洋介・小宮彰・西原大輔・松居竜五・毛利真紀子編『アジア比較文化の名著』科学書院には「ビールーニー『インド誌』」,「ナーセル・ホスロウ『旅行記』」を執筆した。前者ではマイノリティの視点からイスラームの自他認識を分析し,後者ではイスラームにおける異文化交流を考察した。さらに,イスラームと他宗教の比較にも踏み込み,「イスラームにおける仏陀イメージ」『国士舘哲学』第7号ではイスラームの側から見た仏教と仏陀イメージを分析した。
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