Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)欠損マウスの戻し交配をC57B1/6J、C3H/HeNの2系統に対して昨年度より継続しておこない、純系化した動物を生産した。これらのマウスを用いて血小板機能を解析した。cPLA2欠損マウス血液では、コラーゲン刺激に対するトロンボキセン産生量ほとんど消失しているにもかかわらず、凝集能は軽度の遅延にとどまっていた。cPLA2欠損マウスでは出血時間の顕著な延長や血栓モデルにおける致死率の劇的な改善が見いだされ、トロンボキセンの作用は血小板凝集能よりも、主に血管収縮にあると推測された。また、血清中の12-HETE濃度を測定し、トロンボキセンと同様に減少を認めるものの、減少の程度は低く、cPLA2以外のPLA2分子に由来する産出経路が存在することが推測された。肺線維症の病態モデルであるブレオマイシン肺炎を解析したところ、cPLA2欠損マウスは肺胞気管支洗浄液中のエイコサノイド産生量の減少をきたし、生化学的、呼吸生理学的、病理学的所見のすべてにおいて病態の改善を認めた。このことから、肺線維芽細胞の増殖、活性化、肺線維化にいたるいずれかの過程において、cPLA2がエイコサノイド産生を介して病態に深くかかわっていることが明らかとなった。cDNAクローニングしたcPLA2パラログの一つであるcPLA2βの昆虫細胞における大量発現系の構築を行った。現在、リコンビナント酵素を抗原とした抗血清作成と、酵素学的な解明をおこなうべく、準備を進めている。また、cPLA2γについて、参加ストレス時のリン脂質モデリングに関与する知見を得、機能上iPLA2と重なり合う部分の存在が示唆された。
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