Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
1.前年度までの作業成果に基づいて、今年度は1990年代以降のドイツ政党政治の有り様を規定しているモデルの構築に努めた。2.その結果、1990年代のドイツ政党政治に関連して、以下のような知見が得られた。(1)グローバル化や知識中心経済化の進展によって労働のあり方が変化し、従来の社会的紐帯の弛緩が進行した。それに伴い、政党と社会との接合の態様にも変化が生じている。しかし、一部のグローバル化論や近代化論が説くところとは異なり、旧来の社会的紐帯の弛緩は完全な個人主義化につながるものではなく、政党支持・投票行動もアドホックな効用計算のみに基づいて為されているわけではない。そこにはある程度の同質性を持つ社会的まとまり(ミリュー)が存在している。その態様・分布を把握するための視座としては、ブルデューの文化資本論を利用し、経済資本の布置に規定される価値志向(市場観・経済観)と、文化資本の布置に規定される価値志向(秩序や寛容などに対する価値観など)とを組み合わせた2次元的モデルを探ることができる。(2)長らく政権から遠ざかっていたドイツ社会民主党では、グローバル化や近代化の進展による有権者の変化に対応すべく、政策主張を修正した。それに大使、二大政党のもう一方の雄であるキリスト教民主同盟・社会同盟では、1998年に下野した後も方針が混乱し、指導部人事も錯綜した。3.成果の公表を以下の通り行った。(1)検証のために行った資料収集に基づき、ドイツ社会民主党基本価値委員会が作成した綱領検討文書を翻訳し、新綱領作成の背景などを論じた小論とあわせて発表した。(2)1990年代の欧米での中道左派政権を支えてきた「第3の道」論を総括的に論じた論文を翻訳した。この翻訳を載せた論文集(単行本)が2003年3月中に出版される予定である。(3)社会ミリュー論の観点から政党と社会の関係を捉え直すことを眼目とする報告を、2003年6月の日本比較政治学会で行う予定である。
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