Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
Rasと非常に相同性の高い低分子量GTP結合タンパク質であるRinは、脳神経系に特異的に発現し、カルシウムイオン依存的にカルモジュリンとの結合能を有する分子量約25Kの低分子量GTP結合タンパク質である。Rinは神経活動に伴うカルシウムシグナリングに関与する因子と考えられるが、その細胞内情報伝達機構に関しては現在のところ全く不明である。私は、神経系の良いモデル細胞であるPC12細胞にRin遺伝子を発現させたところ、高度に枝分かれした神経突起を形成することを見出した。このRinによる神経突起は、神経成長因子(NGF)による突起とは異なりMAPキナーゼの活性には全く依存せず、優性抑制変異体(Dominant negative)おRac/Cdc42の共発現やカルモジュリン阻害剤の投与により著しく阻害された。又、PC12細胞にRin遺伝子を発現させると、細胞内に存在するRac/Cdc42が活性化されることも見出した。カルモジュリンとの結合能を欠くRin変異体では、野生型Rinと同程度のRac/Cdc42活性化を引き起こせるが、神経突起を形成することは出来なかった。更に、PC12細胞に内在的に存在するRinタンパク質の機能をDominant negative Rin遺伝子の発現により阻害すると、細胞内のカルシウム依存性の情報伝達経路が阻害されることも明らかになった。以上の実験結果から、Rinによる神経突起の形成には、Rac/Cdc42の活性化とカルモジュリンとの結合が必要であり、内在性Rinタンパク質は細胞内のカルシウムシグナリング系に於いて重要な役割を担っていることが示唆された。
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