Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
紫外線誘発アポトーシスが進行している細胞において、シクロブタン型ピリミジン二量体(CDP)が修復されると細胞はアポトーシスを回避することから、CDPの認識機構が紫外線誘発アポトーシスの進行と回避の制御要因であることが、申請者の光回復能が高いメダカ培養細胞を用いた研究から示された。本研究は紫外線誘発アポトーシスにおけるピリミジン二量体の認識からアポトーシス実行までのシグナル伝達機構を連続的に理解することが目的である。そこでCDPの認識をシグナルとしてアポトーシスのカスケードを活性化する因子と、光回復処理時にCDPが修復されたのを認識して、一度活性化されたアポトーシスのカスケードを途中から不活性化、もしくは阻害する因子を同定するため、その候補因子としてtranslesional synthesis(TLS)因子に着目した。TLSは、DNA複製時に損傷部位にて複製を阻害されたDNAポリメラーゼに代わって、損傷を鋳型としてDNA合成をする機構である。中でも紫外線過敏で皮膚癌を高頻度で発症する色素性乾皮症XPVの原因遺伝子であるDNAポリメラーゼηは、CPDを効率よく乗り越え、正しい塩基を重合することは99年に報告された。ポリメラーゼη以外のTLSの因子として、ポリメラーゼηのホモログであるRAD30Bや、誤りがちな修復を行うREV1、REV3、REV7がある。申請者はこれらTLS因子をゼブラフィッシュESTのデータベースで検索し、その情報を元にプライマーを設計し、RACE法によりメダカにおけるTLS因子のクローニングを行った。これまでにメダカDNAポリメラーゼη、RAD30B、REV1を単離した。部分的にクローニングできたREV3以外の遺伝子の全長を決定した。現在各タンパク質を大腸菌にて発現させ精製を行っている。今後各因子のポリメラーゼとしての活性などを測定した後、メダカ培養細胞にて強制発現させた際の紫外線誘発アポトーシスへの影響等を調べることで、CPDからアポトーシスまでの経路に、TLS因子がどのように関与しているかを調べる予定である。