Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
今年度は次の作業を行った。1.昨年度までは、明治期〜大正期の性科学における青少年のセクシュアリティ観を明らかにすべく文献にあたっていた(研究計画書「研究内容」欄(1))。しかし、研究を進めるうち、その思想が戦後の「純潔教育」や「不純異性交遊」概念の成立までに影響を及ぼしていることが明らかになった。そこで、今年度は1950〜60年代の「純潔教育」や「不純異性交遊」関連の文献収集を行った。純潔教育のテキストそのものや、青少年犯罪の統計データが中心となっている。なぜ「純潔」を守らねばならないのか、なぜ「不純異性交遊」が害悪なのか、正当な根拠なく青少年の性行動を禁じている点では、明治30年代の「学生風紀問題」(拙論「『学生風紀問題』報道にみる青少年の性の問題化」『教育社会学研究』第65集参照)とよく似ている。分析結果は、投稿論文として来年度中に発表する予定である。2.昨年度に引き続き、「研究内容」欄(4)としてあげた、「青少年のセクシュアリティの管理実践の成功の度合および管理実践に対する青少年自身の反応」を調査すべく、旧制高等学校における花流病検査(M検)の実施内容、検査をうけた時の感想などにかんして、都内OB600名にアンケート調査を実施した。アンケートは現在回収中である。簡単に集計した感触では、継続的にM検を実施している旧制高校と、そうでない高校がはっきり分けられるようだ。文部省が実施を指導したというよりも、各学校の裁量に任されていた模様である。3.アンケート回答者の一部から、青年期の性生活について個人的にインタビューをさせていただいた。現在データをまとめている最中である。現時点では、青少年の性行動に規制をかけようとする言説(オナニーの禁止、性病にかかるがゆえの性的放縦の禁止)を、青少年はうのみにすることなく、比較的距離をたもって聞いていたことが、新たな知見としてあげられる。(797字)