Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
1 新規神経栄養因子(RNA)の構造解析新規骨格由来神経栄養因子のHPLCによる精製の結果、約10μgのRNA分子が単一ピークに精製された。この画分子には約160塩基からなるRNA分子が含まれていた。前年度までの構造解析から、本活性物質RNAの3'末端の構造が水酸基ではなく、リン酸基が付加している構造が考えられた。そこで3'末端のリン酸基をT4ポリヌクレチドリン酸化酵素により除き、さらにポリA配列を付加した。これにより本活性物質のRNAを鋳型とした通常の逆転写反応が可能となった。活性物質のRNA配列を明らかにするには至らなかったが、今後先にHPLCで精製された活性画分について、塩基配列解析が十分に可能になった。2 新規神経栄養因子(RNA)の作用機構の解析まず6日齢ニワトリ胚を用いた初代培養系において粗精製活性区を用いてインビトロでの作用機構の解析を行った。前年度までに本活性物質を完全にRNaseにより分解すると活性は完全に消失することを示したが、構造解析の過程で活性物質の部分分解を検討した際に、予想外なことに部分的な分解によって、より強い神経栄養因子活性が運動神経の神経突起伸展および細胞体の肥大などによって確認された。また、粗精製活性画分およびその部分分解物のいずれかにおいても神経細胞の細胞死を抑制する活性があることがTUNEL法を用いた解析によって明らかになった。次に生体内での作用解析のために、脊髄運動神経細胞の約半数が死滅する時期の一日前のニワトリ胚の後肢に、骨格筋より精製したRNAを微量注入した。RNAの神経栄誉因子効果を組織切片およびLC/MSによる神経伝達物質(アセチルコリン)の定量により解析したが、有意な神経栄養因子効果を認めるには至らなかった。今後、構造解析結果をふまえた上で、時空特異的な大量発現などにより生体内でも生物活性が認められるものと期待する。