Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
平成14年度は、まず無眼変異の原因遺伝子の一つであるsine oculisの機能を解析した。sine oculisの機能欠損はeyes absentと同様の表現型を示すことが予想されたが、eyes absentが錐細胞の分化に必須であるのに対し、sine oculisの機能を欠いた細胞は錐細胞として分化することが示された。ただしこれらの細胞は異常な形態を示し、またその表現型がDN-cadherin突然変異体と非常に類似していることも同時に明らかになった。そこで現在、両者の関係をさらに詳しく解析している。またeyes absentの機能は第一色素細胞においてはBarやDpax2の発現に必須であったが、sine oculisの変異体においてはこれらの発現に異常は見られなかった。現在、このような表現系の違いがどのような機構によって引き起こされるのか、その原因を調べているところである。次に本年度よりprospero遺伝子の発現制御機構の解析を開始した。今年度の研究により、Notchシグナル及びSine oulis/Eyes absentがprosperoの発現に関与している可能性が示された。具体的には現在までにNotchの下流因子として知られるSu(H)がR1/R6細胞においてはprosperoを抑制し、その一方でR7及び錐細胞においてはprosperoの発現を誘導しているという実験結果が得られた。またNotchシグナルに関わるLongitudinal lackingもprosperoの活性化に関与している事を示唆する結果を得た。そこで現在はprosperoの発現制御領域に塩基置換を導入することにより、これらの因子によるprosperoの発現制御機構を詳細に解析しているところである。またこれらの実験と平行してSine oculisの結合配列と考えられる部位に変異を導入した形質転換体も作製しており、これら形質転換体における発現制御領域の活性を測定することにより細胞特異的な遺伝子の発現がどのようにして制御されているのか、その機構が明らかになると期待される。