Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
今年度は今までの研究をまとめることに邁進した。本研究では、まず、条約によって領事裁判権を譲渡することによって生じた、日本と諸外国との間の紛争解決システムを領事裁判制度と定義し、これまで実証的研究の弊害となっていた治外法権のイメージとの分離をはかった。また、日本にもっとも影響力のあったイギリスの領事裁判システムについても検討し、とくにイギリスの法的根拠、領事裁判システムの実質的な創始者であるホーンビーについても研究した。そのために、継続してきた英国公文書館(Public Record Office)所蔵文書の収集をおこなうとともに、大英図書館(British Library)における調査をおこなった。マリア・ルス号事件で活躍することになるホーンビーは、三十年以上の間に英米間で積み重なった訴訟すべてを仲裁によって解決した経験を持ち、トルコでの領事裁判システムの経験と合わせて、アジアにおける領事裁判システムを構築した。しかし領事裁判制度は成立したばかりであり、日本の対応によって流動的であったことが確認できた。「幕藩関係にみる裁判権」(横浜開港資料館編『江戸時代の犯罪・情報(仮)』)では、幕府支配地である長崎において藩士を処断できないことに関して、イギリス公使パークスらが幕府は大名に裁判権を譲渡していると考えていたなど、裁判権の属地属人的区分に当時のイギリス人がいかに関心を寄せていたかを検討した。今後ともいっそう研究成果を公表していくつもりである。
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