Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、反芻動物の着床前後期に胚から盛んに発現・分泌されるインターフェロン・タウ(IFN-τ)の特性を解明し、それを利用することでウィルス感染に強い家畜動物を作出することを目的としている。今年度の成果として1.IFN-τ遺伝子を様々なタイミングで発現させるための遺伝子発現ユニット(持続発現型、金属誘導型、テトラサイクリン誘導型)を構築し、MDBK細胞(ウシ腎臓由来)へ導入した。しかし、導入細胞におけるIFN-τの一過性発現(トランジェント)は確認されたが、ネオマイシン選択による導入クローンの作成が困難を極めた。MDBK細胞への過剰なIFN-τの生物活性が関係していると考えられ、既存のプロモーター制御利用によるIFN-τ発現の再現は難しいと推察された。そこで、着床期におけるIFN-τ細胞・時期特異的発現を解明し上記の研究に利用するため、IFN-τ遺伝子上流域解析、特にプロモーター領域へのメチル化の影響について検討を行った。その結果、IFN-τ遺伝子の時期特異的発現にはプロモーター領域のメチル化が関与していることが示唆された。2.反芻動物の着床期子宮内において発現が認められ、またIFN-τにより発現が誘導されるIP-10ケモカインの機能解析を行ったところ、IP-10は免疫細胞の走化性・遊走性を増加させ、インターロイキン-10(IL-10)の発現を誘導することが示された。このようなIFN-τ∇IP-10-免疫細胞遊走経路は、着床成立に必要な免疫学的変化を引き起こすものと考えられた。またこの経路は、長年不明であったIFN-τの抗ウィルス活性機序を理解する上で重要な役割を担うものと推察された。3.IP-10ケモカインのレセプターであるCXCR3が、胚のトロホブラスト細胞に発現していることが確認され子宮内IP-10により、胚の走化性・接着性が増加することが明らかとなった。このIFN-τ∇IP-10-胚の遊走・接着増加経路は、上記の免疫学的変化と共に反芻動物の着床成立に重要な役割を担うもの考えられた。
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