Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究期間の最終年である今年度は、これまでの成果をまとめつつ、既往の研究とも比較しながら、金属酸化物中における水素同位体の存在状態と、それにおよぼす欠陥の影響について評価した。対象としてはこれまでに続き酸化リチウムを取り上げるとともに、比較のために一部の実験において酸化マグネシウムも用いた。今年度は特にイオン照射によって固体内に導入された欠陥が水素同位体におよぼす影響の解明に取り組んだ。イオン照射下で固体内のO-D伸縮振動を観察できる赤外吸収分析系を製作し、照射場や試料温度を制御しつつ、その場測定を行った。ここからは、照射欠陥が固体内の水素同位体におよぼす影響と、その温度依存性が明らかになった。また、照射によって導入された水素同位体は、そのほとんどが固体内でO-H結合をせずに存在していることも明らかになった。原子レベルでの反応過程についてはこれまでに引続き、第一原理に基づく量子化学計算を行い、実験結果と比較することで解明を進めている。実験結果から示唆されたF-centerが水素同位体におよぼす影響については、電子密度分布や、欠陥と水素同位体との間の電子移動、エネルギーの観点から評価した系の安定性などを検討した。これらの解析から実験結果の帰属を進めるとともに、欠陥と水素同位体との相互作用を、特に電子移動の観点から整理した。本研究で得られた酸化リチウムに関する知見をもとにしつつ、他の酸化物における既往の研究成果を比較検討し、金属酸化物における水素同位体の存在状態について、特に陽イオン空孔と酸素イオン空孔がおよぼす影響が重要であることを示した。
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