Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
・QCD相転移モデルにより物質の真の安定状態として存在が理論的に予想されているストレンジ・クォーク・マター(SQM)を宇宙線中に探索するために開発した測定器をBESSスペクトロメータに搭載し、データ収集を行なってきた。現在のところ、SQMの確たる候補イベントは見つかっていないものの引き続きこれまでに得られたデータの解析を進めている。・今後、SQM探索をより高感度で行なうためには、観測時間を大幅に延ばす必要がある。1度のフライトで得られる観測時間をこれまでの10倍に延ばすため、極地方周回気球による長時間観測実験BESS-Polarの実施を計画している。長時間飛行を実現するためには軽量かつ安定的な電源系の確保が不可欠であり、そのため太陽電池を用いた新しい電源システムの開発を進めてきた。この新しいシステムはこれまでの気球実験にない高効率の太陽電池セルと効率的な受光が可能な構造体を有しており、電源系の重量を従来の搭載一次電池(200kg)とほぼ同程度(300kg)に抑えたまま20日間のフライト期間中の電力を確保することが可能となる。この電源系の性能を確認することを目的に、実寸大プロトタイプ太陽電池システムの気球による飛翔実験を14年5月に宇宙科学研究所三陸大気球観測所にて実施した。その結果、同システムの電力特性および構造体の空力学特性がいずれも設計通りの性能を有していることを確認することができた。これを踏まえ、現在BESS-Polar用の実機システムを製作中である。・宇宙線中にその存在が示唆されていながらこれまで全く探索が行なわれてこなかったものとして宇宙線反重陽子が挙げられる。反重陽子は原始ブラックホールや超対称性ニュートラリーノなど未知の一次起源の存在を探るプローブとして今後注目が高まることが予想される。そこでこれまでのBESS実験のデータにおいて反重陽子を探索すると共にBESS-Polar等の将来計画における探索の見通しの検討を進めている。
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