Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
出芽酵母の胞子形成過程では、微小管集合中心(SPB)と胞子壁の成分が協調して機能して、全く新規に胞子壁を形成する。胞子壁の成熟に伴うグルカン合成機構に興味を持って研究を始めた。これまでの研究から、グルカン合成酵素の推定上の触媒遺伝子には3種類の相同遺伝子(FKS1、FKS2、FKS3)があり、生活環に応じて使い分けられていると報告されている。このうち、減数分裂特異的に転写が上昇するFKS3遺伝子の機能について解析を行った。遺伝子破壊した2倍体株fks3/fks3は減数分裂が正常に進み胞子を形成するが、生成した胞子は高温、エタノール、SDSなどのストレスに感受性を示し野生型と比べて生存率が著しく低下した。一方、fks1/fks1、fks2/fks2破壊株が生成する胞子はこれらのストレスに対して野生型と同様の感受性を示した。fks3/fks3株の胞子を電子顕微鏡で観察すると、野生型の胞子壁は厚さが一定であるのと比較して、変異体では胞子側に貫入したり部分的に薄くなるなどの異常な胞子壁が観察された。また、Fks3pの局在を間接蛍光抗体法で調べたところ、胞子形成直前に前胞子膜付近にドット状に局在していた。これらの結果から、Fks3pは正常な胞子壁形成に必須で胞子内部を保護するための堅牢な胞子壁を構築する役割があると明らかになった。さらに、Fks3pのグルカン合成機能を検証するために、栄養増殖時にFks3pが発現するようにFKS3のプロモーターを置換したキメラ遺伝子を作成した。fks1温度感受性株に過剰発現したところ制限温度においてグルカンの量と生育が回復したことから、Fks3pはFks1pと同じくグルカン合成に関わるの機能があると思われる。以上の実験結果から、グルカンが胞子壁の成熟の段階で重要な働きをしていること、新規タンパク質Fks3pがそのグルカン合成に関わっていることが分かった。現在、以上の結果をまとめて、雑誌に投稿する準備を進めている。
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