Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は、第一に3次元量子ホール状態における表面電流の役割について考察した。通常の2次元の量子ホール効果では試料内部(バルク)とともに試料端の状態もホール電流に寄与することが知られている。すべてのホール電流が端を流れたとしたときのホール伝導度はバルクのそれと全く等しくなることが知られ、バルク描像と端描像は量子ホール効果の理解において相補的な役割を果たす。本研究では3次元量子ホール効果においても試料表面が重要な役割を持ちうると考え、磁場中の3次元周期系における表面状態を初めて一般的に考察した。その結果、バルクのエネルギーギャップ内には表面状態が常に存在し、その状態が運ぶ電流は、バルクのホール伝導度を与える3つの整数でその方向が特徴づけられる「表面包囲電流」になっていることを明らかにした。これは表面電流が持つ情報がバルクの情報と密接にかかわっている事を示し、実際、表面電流で測定されるホール伝導度は2次元の時と同様、バルクのそれと同じ値になることが示された。結果はPhysical Review B rapid communicationsに掲載された。第二に、3次元特有の量子ホール効果を実現する方法として、スピン密度波の系を考察した。ほぼ擬2次元系とみなせるBechgaard塩の議論を3次元の場合に拡張し、磁場下でのスピン密度波の振舞いを平均場近似で計算した結果、磁場の方向や大きさを変化させることで3次元系特有の様々なスピン密度波相が現れることが確かめられた。各相は量子化された3次元ホール伝導度で特徴づけられ、また準粒子スペクトルはbutterflyスペクトルになっていることが確かめられた。また上述の表面状態の議論をスピン密度波系に拡張することで、この系における量子化された表面包囲電流を議論した。本成果は2002年の国際会議International Conference on the Physic of Semiconductorsで発表された。
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