Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
喘息には気道の慢性炎症が背景にあると考えられている。また、その慢性炎症には、C線維をはじめとする知覚神経の興奮が大きな役割を果たしていると考えられている。しかし、気道の慢性炎症について、アレルギー性炎症という観点からの報告は非常に多いものの、神経原性炎症という観点からの報告は少ない。そこで、気道の慢性炎症への神経原性炎症の関わりを明らかにするために、気道の知覚神経の興奮特性を電気生理学的手法を用いて明らかにした。抗原感作動物として実験に広く用いられる卵白アルブミン(OVA)感作モルモットを用いて気道の感覚神経の活動を迷走神経より記録した。その結果、対照群に比較して抗原感作群のC線維の活動の亢進が認められた。さらに、機械的刺激に応答性を持つ線維の活動の亢進も認められた。また、近年作出された気道アレルギーを示す日本スギ花粉感作犬においても同様の神経記録を行い、C線維の活動の亢進を確認した。OVA感作モルモットにおいては抗原感作により気道に好酸球浸潤が認められ気道上皮の傷害が示唆されたが、日本スギ花粉感作犬ではアレルギー反応後の好酸球浸潤が認められず、気道上皮傷害が生じていないと考えられる。これまでの報告では気道上皮傷害に伴い知覚神経が粘膜面に露出する結果として神経原性炎症が誘発されるとされてきたが、今回の結果から、日本スギ花粉感作犬では気道上皮傷害がなくとも神経原性炎症が誘発されることが示唆された。これは、アレルギー反応により放出される様々なメディエーターにより知覚神経の生理的性質が変化したことによるものと考えられる。今後どのようなメディエーターが知覚神経の性質の変化に関与しているか明らかにする予定である。