Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
前年度までに、27位トリチウム標識オカダ酸に対する結合活性を指標にクロイソカイメンからタンパク質精製を行い2種類のオカダ酸結合タンパク質(Okadaic Acid Binding Protein ; OABP1,OABP2)を単離することに成功している。相同性検索の結果、OABP2は新規性の高い配列を有するタンパク質であることが明らかとなった。そこで、本年度においてOABP2とオカダ酸の結合親和性、及びその結合様式の評価を行った。27位トリチウム標識オカダ酸を用いた結合試験によりオカダ酸とOABP2との解離平衡定数をScatchardプロット解析を行った結果、Kd=0.9nMと強い結合親和性を有していることが示された。OABP2のオカダ酸に対する認識特異性をプロテインホスファターゼ(PP)阻害剤またはオカダ酸誘導体による競争阻害実験により調べた。OABP2とトリチウム標識オカダ酸の結合は、オカダ酸と同じくPP1やPP2Aの強力な阻害剤として知られるミクロシスチンLRやカリキュリンAによる阻害を受けなかった。一方、オカダ酸誘導体はいずれもオカダ酸の結合を阻害し、PP類とは選択性が異なることが明らかになった。7位または24位ヒドロキシル基にスペーサーを介してビオチンを導入した誘導体はオカダ酸と同程度のIC50値を示し、メチルエステル体、27位誘導体は阻害活性がそれぞれ約1/10、1/100に低下した。以上のことからOABP2はPP類とは異なる様式でオカダ酸を認識していることが示唆された。複合体構造に関する詳細な情報をX線結晶構造解析により得ることを計画して、結晶化用のOABP2の大量調製を大腸菌発現系により行った。精製した発現タンパク質の結合活性を評価した結果、天然体とほぼ同様の親和性を有していることが示された。現在、結晶化条件を検討中である。また、OABP2がクロイソカイメンに特異的に存在することを、光親和性標識プローブを用いた検出法により示した。OABP2の配列の新規性、オカダ酸に対する強い結合親和性、種特異性から、当タンパク質がクロイソカイメン体内に大量に蓄積されている細胞毒オカダ酸に対する自己耐性機構に何らかの形で関与している可能性が示された。カイメンから種特異的に単離される生理活性物質は共生微細藻による生産であると提唱されているが、十分な証明はなされていない。今回、示された固有の結合タンパク質の存在、すなわち耐性の特異性により、共生関係の特異性を説明でき得るものと考えている。
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