Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は地球深部に相当する圧力、温度の条件(圧力〜135GPa、温度〜4000K)を実験的に実現し、コアを想定した純鉄と、マントルを想定したマグネシオウスタイトの間でのFeO組成の相関係をしらべることにある。本年度の半ばまで、東京大学からthe University of Chicagoへの委託研究により、Guoyin Shen博士の指導のもとで、引き続き研究を行った。以前行った実験に用いた試料よりも鉄に富んだ鉄酸化物(Fe_<0.95>O)の高温高圧相の構造、転移圧を調べる実験を行った。以前行ったFe_<0.91>Oの実験では、1500Kにおいておよそ130GPaにおいて高圧相であるB8構造相が出現したが、Fe_<0.95>Oの実験では147GPaでも低圧相であるB1構造相のままであった。このことは地球のマントル全体にわたって低圧相であるB1構造が安定である可能性を示唆している。また、得られた1500KにおけるB1構造Fe_<0.95>Oの圧力と体積の関係と、過去に研究されている鉄の状態方程式、地震学的に観察される地球の核の密度と合わせて、地球の核の軽元素として酸素のみが含まれると考えた場合に、地球の密度を説明する酸素の量を推定した。その結果は外核でおよそ27atm%、内核でおよそ15atm%であり、現在観測されている16GPaにおける酸素の固溶度、共融組成と比較すると、地球核の軽元素を酸素のみで説明するのは難しいと考えられる。以上の結果は本来の目的と比較すると、端成分についてのいくつかの性質がわかったという段階にとどまってしまった。しかしながら、今後機会があれば、相関係を調べる研究を行い、酸素が地球のコアに含まれる軽元素としてふさわしいかどうか、含まれる場合にコア-マントル境界付近でどのような反応が期待されるか明らかにしていきたいと考えている。