Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
小脳プルキンエ細胞には登上線維と平行線維(PF)が興奮性シナプスを作っており,PF-プルキンエ細胞(PC)間のシナプス伝達効率が長期間にわたって抑制される現象LTDは,運動学習の基礎過程の候補である.LTDはPC内Ca^<2+>濃度上昇が必須であり、PC側のAMPA受容体を介する電流が低下することで表現される。しかし、Ca^<2+>濃度上昇とAMPA受容体を介する電流を低下させる機構を結ぶ因子は不明である。本研究ではこの因子をCa^<2+>依存性脱リン酸化酵素カルシニューリン(CaN)と仮定し、それを検証した。マウスから小脳スライス標本を作製してホールセルパッチクランプ法によりPCの電気生理学的記録を行なった。始めに、CaN阻害薬であるサイクロスポリンA(CsA)がPF-PC間のEPSCの振幅に直接の影響は及ぼさないことが確認した。次に1μM CsAで処理した小脳スライス標本上で、LTD誘導刺激を行った。薬物なしの対照実験ではEPSCが約30%低下するLTDが観測されたが、薬物存在下ではEPSCの低下は約15%にとどまり、LTDの形成が有意に抑制された。また、別のCaN阻害薬であるFK506を用いても全く同じ結果が得られた。CaN阻害薬を細胞外液中に入れたことでプレシナプスにおいてLTPが起こりLTD形成が抑えられた可能性を検証するためパッチ電極内にBAPTA20mMを入れ、PC内Ca^<2+>をキレートしてシナプス後膜側でLTDが起きない状態にし、LTD誘導刺激をCsA投与群と非投与群に対して行った。刺激後のEPSCの振幅は両群ともに刺激の前後で有意な変化はみられず、両群間にも有意な差は見られなかった。最後にCaN阻害ペプチドを含んだパッチ電極内液でPCをパッチクランプし、シナプス後膜側のみでCaNを阻害した条件下にてLTD誘導刺激を行った。対照実験には、阻害ペプチドの配列をスクランブルしたペプチドを用いた。対照実験ではEPSCが約30%低下するLTDが観察されたのに対し、阻害ペプチド入りの内液でパッチクランプした細胞では刺激前のものに比べてEPSCがほとんど変化せず、LTD形成が有意に抑えられた。以上の結果からLTD誘導刺激に引き続くPC細胞内Ca^<2+>濃度上昇が少なくともCaNを活性化してLTDを形成していることが分かった。
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