Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
申請者はこれまでにイネチオレドキシンh(rice TRXh)を発現した形質転換タバコの分子量限界が野生型タバコに比べ増大していること、この形質転換体においては変異型tomato mosaic virus(ToMV)、LQ37Eの移行タンパク質(MP)の細胞間移行が相補され、LQ37Eの細胞間移行が少なくとも一部相補されることを示してきた。そこで、他のウィルスのMPでもrice TRXhはその機能を相補できるかどうかを調べるために、red clover necrotic mosaic virus(RCNMV)のうちMPに変異を持つ128-BAM、161-BAMを用いた。これら変異型MPはGFPとの融合タンパク質として発現するようにコンストラクトされている。まず、RCNMVの宿主となるNicotiana benthamianaを用いてrice TRXhを発現する形質転換体を作成した。ウェスタン解析により、rice TRXhを発現していることを確認したT2世代の独立した2ラインNb41、Nb44を用いた。感染実験の結果、Nb41、Nb44における細胞間移行頻度を理論値として検定した場合のみ、Nb41、Nb44では野生型植物と比べ有意に高い頻度で変異型MPが細胞間を移行した。また、感染実験の過程で原形質連絡に局在すると考えられるMP-GFPの蛍光が観察された。1細胞におけるこの蛍光の数を比較すると、Nb41、Nb44において野生型植物と比べ、有意に多くの蛍光が観察された。以上の結果から、rice TRXhは変異型RCNMV-MPの細胞間移行を相補すると結論づけるには至らなかったが、変異型MPの原形質連絡局在機能を相補している可能性が示唆された。これらは上記、ToMVの実験結果とともに、細胞間移行能力を持つ植物タンパク質が、ウィルスのMPの機能を少なくとも一部でも相補した世界で初めての例となった。