Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
北海道のオオバナノエンレイソウ13個体群を対象として、花のディスプレイ戦略を比較した。これまでの性配分(sex allocation)理論は、性配分様式が交配様式の影響を受けることを予測している。ここではより広い視野から、花のディスプレイを決定する要因として(1)花の大きさと数とのトレードオフ(2)花への資源配分量(3)花内での資源(性)配分のパタンとトレードオフ(4)個体サイズと花数との関係の4項目に着目した。実験は各個体群において、花を1つ持つ個体と2つ持つ個体をそれぞれ採集し、各器官の乾燥重量を測定することによって行った。個体群は3つの地理的グループ(北部・南部・東部)に分けられ、また交配様式にも違いが見られる(自家和合性と自家不和合性を示す)。得られた主な結果は以下の通りである。(1)花の大きさと数との間には明瞭なトレードオフが見られた。(2)花への資源配分比は南部の個体群で小さかった。(3)花内での資源配分パタンは、主に自家不和合性を示す東部の個体群で花弁への配分比が大きく、逆に雌蕊への配分比が小さい傾向が認められた。(4)東部の個体群では、個体サイズのレンジが花数が1つのもの、2つのもの共に他地域よりも大きかった。これらの分化パタンは、地理的グループとの間に明瞭な対応関係を示した。グループ間では遺伝的分化が認められるため、各ディスプレイ戦略は遺伝的基盤を持つと推測される。主に自家不和合性を示す東部の個体群では、どのディスプレイ戦略も常に花弁サイズが大きくなるように働いていたが、必ずしも交配様式との間に対応関係を示すものではなかった。観察された分化パタンを生み出す背景には、個体群の交配様式に加えて、その分布や分化史が複雑に関与していると考えられる。
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