Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は走査トンネル顕微鏡/走査トンネル分光(STM/STS)を用いて高温超伝導体の電子状態を明らかにすることにある。高温超伝導体は母物質であるMott絶縁体にキャリアが注入されて出現する金属相において発現することが知られている。この金属絶縁体転移の過程でストライプオーダーや電子液晶といった風変わりな電子状態の出現が予想されている。そのため実験的に金属絶縁体転移近傍における電子状態を明らかにすることは非常に意義があるといえる。そこで本研究では金属絶縁体転移近傍にキャリアドープされたPb-doped Bi_2Sr_2ErCu_2O_y単結晶試料を早稲田大学寺崎研究室より提供を受け超高真空7KにおいてSTM/STS測定を行った。Pb置換量が20%程度のものはU字型の絶縁体的なトンネルスペクトルを示し、状態密度は空間的に不均一であった。その一方Pb置換量が30%程度のものはErに有限の状態密度を残す擬ギャップ状のスペクトルを示し、状態密度は絶縁体的な試料よりも相対的に均一であった。これらの実験結果はバルクの測定であるトランスポートや、熱起電力から説明するのは困難であるように見える。すなわちこれらの2種類の試料のバルクのキャリア濃度の差は極めて小さく定性的な物性の変化は無い事と、我々のSTM/STS測定による局所状態密度の劇的な変化は矛盾するように見える。金属絶縁体転移近傍の組成でバルクでは観測が困難な急激な状態密度の変化がユニバーサルに存在するのか、Pbと過剰酸素の2種類のドーパントが存在する本系における特殊な現象であるのかは緊急の課題であり今後検討を要する。
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