Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
平成14年度は主として、ドイツ・イギリスにおける、従来の、雇用における年齢差別の法規制について、どのような法規制が行われてきたのか(内容)、その背景はいかなるものであったのか、どのような学説の議論が存在してきたのかという点を検討した。これは、昨年検討対象としたEUで2000年11月27日、EUの理事会で出された「雇用および職業における平等取扱いについての一般的枠組を設定する、2000年11月27日の理事会指令2000/78/EC」についての、中でも年齢差別の規制と、修士論文で検討を加えた米国の雇用における年齢差別禁止法との比較検証を行う目的であった。その調査の結果明らかとなったのは以下のようなことである。第一に、ドイツでもイギリスでも、これまで定年制が全く禁止されてこなかったことである。この理由は、定年制が高齢者の人権に関わると意識されてこなかったこと、とりわけドイツにおいては解雇が困難なため定年制が人員調整の手段として必要なものと考えられているのではないかということである。第二に、ドイツでもイギリスでも、これまで賃金・福利厚生における年齢差別、解雇における年齢差別が規制されてこなかったことである。この背景には基本的に賃金が職務給であり、とりわけドイツでは解雇の法規制により高齢者の解雇はむしろ困難であると分析した。