Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、糖加水分解酵素に耐性を有するチオ糖残基を、糖転移酵素を利用して糖蛋白質上の糖鎖末端部分に組み込み、加水分解酵素に耐性を有する糖蛋白質を合成することを目的としている。これまでの研究によりチオシアル酸に関しては、シアル酸転移酵素を用いればチオシアル酸残基をN-アセチルラクトサミンに組み込むことが可能であること、更にそのチオシアル酸部分がシアル酸加水分解酵素に耐性を有していることが確認できている。しかしながら、酵素の基質として必要となるCMP-6"チオシアル酸は、非常に加水分解を起しやすく数十mgスケールでの合成は困難であった。そこで化学的に6-チオシアル酸を糖鎖に組み込む手法を試みることとした。現在3種類の6-チオシアル酸供与体(グリコシルホスファイト、チオグリコシド、フッ化糖)の合成が完了しているので、今後、グリコシル化反応を行なう予定である。また、チオフコースに関しては、フコース転移酵素の基質となるGDP-5"-チオフコースを合成する際の、リン酸グリコシル化反応のβ-体の立体選択性が低い問題点を改善するために、5-チオフコースに様々なアシル基を保護基として用いその選択性に対する影響を調べてきた。これまでの成果として3,5-ジニトロベンゾイル基を保護基として用いた場合、α:β=1:2となることが判明している。本年度は、更に詳細にその反応条件を検討することとした。その結果、反応温度を40度、リン酸化試薬を2.8当量用いれば、反応時間は8時間と長くなるもののその選択性は大幅に向上しα:β=1:6(β選択性86%)となることを見いだすことができた。リン酸グリコシル化後の脱保護に関しても、NaIを用いてリン酸モノベンジルエステル体に変換したのち28%アンモニア水によりジニトロベンゾイル基を除去し、次いでパラジウム触媒による接触還元をすることで定量的に進行することが判った。