Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、SFG分光法を用いた半導体光触媒表面上における表面光反応の観測手法の確立と、表面光反応をピコ秒の時間分解能で実時間追跡し、反応の進行にともなう吸着分子の構造変化や反応中間体の観測、さらには光触媒反応の素過程について微視的立場から検討を行うことを目的としている。これまで時間分解SFG分光法と表面温度ジャンプ法を組み合わせ、Ni(111)上に形成される短寿命フォルメート種(DCOO)の検出を行ってきた。超高真空容器内(base pressure 1x10^<-10> Torr)内にあるNi(111)に、273Kでギ酸(DCOOD)を導入するとフォルメートが表面に吸着する。SFG測定により2196cm^<-1>および1328cm^<-1>に観測されるピークはフォルメートのν(CD)伸縮およびν(OCO)伸縮振動にそれぞれ帰属される。このピーク強度は、共にポンプ光(800nm)照射直後に大きく減少した。この励起直後の初期過程には、SFG強度変化量のNi基板温度依存性および励起光度依存性の測定から、Ni基板内に過渡的に生成したホットエレクトロンを介したnonthermalなプロセスが存在することが示唆された。また、SFG強度の回復過程においては、ν(CD)の方がν(OCO)よりも早い時間で回復することが分かり、同一吸着分子内で、振動モードにより緩和のダイナミクスが異なることを初めて明らかにした。また、SFG分光法をPt電極上のメタノール酸化反応に適用し、その反応機構の解明を試みた。電気化学測定には三電極式の分光電気化学セルを用い、作用極としてPt(111)、対極にPt線、参照極にRHE電極をそれぞれ用いた。支持電解質として0.1M HClO_4溶液を用い、電極電位を+20mVに保持した状態でメタノールをセル内に導入しSFG測定を行った。メタノールの解離吸着が進行し始める電位(+300mV)に電極電位をしばらく保持した状態でのSFG測定により1800cm^<-1>付近と2240cm^<-1>付近にPtのbridgeサイトとon topサイトに吸着したCOに帰属される二つのピークが出現した。このことから、従来言われてきたように、メタノールはPt表面でCOとして解離吸着していることが今回確認された。この両ピークの経時変化から、吸着COは、その吸着初期においてPtのon topサイトに比べbridgeサイトに優先的に吸着が進行することが明らかとなった。また、吸着COの電極電位依存性から、低電位側では、COはPt表面でisland上に吸着層を形成し、高電位側では、吸着層内均一にCOの酸化が進行化するのではなく、islandの周囲から酸化が進行することが分かった。
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