Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
広塩性魚類は淡水にも海水にも適応できる驚くべき浸透圧適応能力を持つ。このことから広塩性魚類は浸透圧適応機構の解明における興味深い研究対象と言える。本研究では広塩性魚類の一種であるウナギを用いて、浸透圧適応において重要な役割を担う分子の同定をディファレンシャル・ディスプレイ法により試みた。その結果、ウナギの淡水適応時において特異的な発現を示す新規のRBCC(RING finger-B-box-coiled coil)プロテイン(eRBCC)の同定に成功した。eRBCCは淡水適応時に高い発現を示し、その組織発現はエラに特異的であった。次に海水に適応させたウナギを淡水へ移行しエラのサンプリングを行う移行実験を行い、そのmRNAの発現量の変化を調べたところ、その発現は淡水移行後12時間において海水適応時の約6倍ともっとも高くなることを明らかとした。また、in situハイブリダイゼーションおよび免疫組織染色による解析を行ったところ、その発現部位はエラの呼吸上皮と浸透圧適応に重要な働きを担う塩類細胞とに局在していることが明らかとなり、さらに細胞内でのその局在はそれぞれの細胞の核に特異的なものであった。RING-fingerドメインにはユビキチンリガーゼ活性を持つものが多数報告されている。そこでeRBCCのRING-fingerドメインにおけるユビキチンリガーゼ活性の有無を調べるため、in vitroでのユビキチンリガーゼ活性の測定を行ったところ、活性の存在が確認された。以上から本研究においては広塩性魚類であるウナギの淡水適応時のエラにおいて重要な役割を担うと考えられる新規分子eRBCCの同定に成功した。この分子の働きは、エラの呼吸上皮および塩類細胞の核に局在、ユビキチンリガーゼ活性を有することから、これらの発現部位においてタンパク質の分解の制御を行い、その淡水型への分化への関与と考えられる。
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