Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は、これまでの研究成果から、クラスタ型並列計算機をはじめとする分散メモリ型並列計算機上に、リフレクションとソフトウェア分散共有メモリを用いてポータブルな並列実行環境を実現するフレームワークOpenDSMを理論的な側面から示した。OpenDSMフレームワークは,ポータブルに実現されたソフトウェア分散共有メモリとリフレクションの理論に基づいたOpen Compilerによって、プログラムに対するポータビリティを提供する。これによってプラットフォームポータビリティとパフォーマンスポータビリティという直交する2つのポータビリティを満たすことができる.具体的には、まずプログラムの解析およびソフトウェア分散共有メモリライブラリを利用するオペレーションの挿入などの変換を記述したメタクラスを用意する。次に、このメタクラスに基づいて、Open CompilerがSPMDスタイルで記述されたプログラムをコンパイル時に静的に変換する。そしてポータブルに実現されたソフトウェア分散共有メモリライブラリとリンクすることによって、プログラムのクラスタ型並列計算機上での動作を可能とする。このOpenDSMフレームワークに基づいて実現されたC++言語を対象としたOMPC++システムとJava言語を対象としたJDSMシステムを、PCクラスタ上で評価し、その有効性を実証した。さらに、JDSMシステムを、C言語を対象としたPage-Baseのソフトウェア分散共有メモリシステムであるTreadMarksと、実アプリケーションベンチマークであるSPLASH2ベンチマークプログラムを用いて性能比較を行った。この結果、JDSMシステムはTreadMarksの約80%の性能を達成しており、高い性能が得られることも分かった。また、Grid環境上での評価においては、ユーザ認証・プログラムおよびデータ転送のコストはLAN、WAN環境とも大きな差はなく、低いオーバーヘッドで実行可能であることが示された。