Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
三カ年計画の最終年にあたる今年度は、初年度・二年度で重点的に開発を行なった新規不斉金属錯体を用いて研究を行なった。特に従来着目されてこなかったカチオン性パラジウム錯体の優れた触媒活性を新たに見出し、当初の計画どおり、これを用いた実用化を志向した不斉触媒反応の開発を行なった。具体的にはまず本研究の触媒開発の過程で見出したエンインを基質とするエナンチオ選択的不斉環化反応を検討した。本系では申請者は既に不斉PP配位子を用いて定量的かつ光学的に純粋に環化生成物を得ることに成功している。今年度は新たに不斉PN配位子を開発し、より広範な基質に対応できる触媒体系を樹立した。特に不斉PN配位子は不斉PP配位子と相補的に働き、従来不斉PP配位子では困難であったスピロ環形成反応をパラジウム触媒エン型環化反応としては始めて実現に成功した。さらにより実用的かつ生理活性が見込まれる生成物としての付加価値の高いキノリン環(キノリンアルカロイド)合成も検討を行なった。その結果、幅広い基質に対して定量的かつ光学的に純粋なキラル(スピロ)キノリン環合成に成功し、含窒素複素環形成反応として実用的で極めて強力な手法を実現した。同時にキノリン環合成は六員環形成反応としての不斉エン型環化反応の初めての例である。また不斉PN配位子を用いた際の高度な不斉場を基に、従来明らかにされていなかった遷移状態における新たな知見を見出し、パラジウムを介してN/Cトランスで反応が進行することを明らかにした。さらにカチオン性パラジウム錯体をC-H結合活性化反応に適用したところ、比較的良好な触媒活性を有することが明らかとなった。従って更なる触媒開発を行うことで、より実用的な不斉触媒反応が開発できると考えている。
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