多文化マイノリティによるアイデンティティ戦略と再生産戦略
Project/Area Number |
00J11067
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
社会学(含社会福祉関係)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
中力 えり 立教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2000 – 2002
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
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Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | アルザス / フランス / 地域語 / バイリンガル教育 / 社会的再生産 / 文化的アイデンティティ / 言語問題 / 象徴的支配 |
Research Abstract |
本年度の研究は、フランスのアルザス地方で実施した現地調査の結果をもとに、言語教育運動の中心となっているバイリンガル教育の諸争点についてまとめることを中心に行った。 配票調査、およびインタビュー調査の結果を詳細に分析することで明らかとなったのは、アルザス地方において実施されている、フランス語とドイツ語を使用した幼稚園からの二言語対等教育は、アイデンティティにもとづいた動機から選択されているというよりも、むしろ社会的再生産戦略としての性格が強いということである。 バイリンガル学級に通う児童の父母の文化資本、および社会関係資本は一般学級に比べて高く、労働者階級の家庭も含め、子供の教育に強い関心を持ち、積極的に関わっている者が大半を占めている。また、その関心は、将来就職する際に有用なドイツ語の習得というだけでなく、バイリンガル学級が副次的に生み出す、恵まれた教育環境にも大いに向けられている。 その一方で、フランス語とドイツ語を用いたバイリンガル学級開設への抵抗が依然として強いことの理由を理解するためには、同地方がかかえる複雑な歴史の影響を考慮する必要がある。ドイツ語が「地域語」教育の一環として教育言語として使用されていながら、その事実が前面には出されず、諸関係者によりあいまいなままにされているのは、ドイツ語およびドイツに対する人々の感情が、未だ戦争の記憶とは切り離されていないからでもある。そうした状況にあっては、多文化マイノリティの多文化的文化や、象徴的力関係をめぐる闘争の問題についての議論はほとんどみられない。現在展開されているバイリンガル教育は、従って、隣国の言語の習得という視点のもとに発達してきたものであると言える。 今後は、複数の文化を内面化した者に着目し、その「文化的アイデンティティ」をめぐる問題を通してみることで明らかとなる象徴的支配の構造と、象徴的力関係をめぐるさまざまな闘争を分析していく予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)