Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
2001年1月から3月にかけて観測された活動銀河核Markarian421の観測結果はAstrophysical Journal誌に掲載された。この論文はエネルギー10TeV(10の13乗電子ボルト)領域でのガンマ線検出を報告したものであり、実際に測定されたガンマ線は銀河系外起源では最高エネルギーに属する。この観測には約70度の大天頂角方向での観測手法を用いた。この観測の利点はガンマ線の有効観測面積の増加、それに伴うフラックス感度の向上である。この観測を成功させ、エネルギー10TeV以上での高感度なガンマ線測定を実現させた。今後はこの技術をさらに推し進めて、10TeV以上の領域での新たなガンマ線放射天体および宇宙像が開拓されていくことが予測される。またこのエネルギー領域のガンマ線は初期宇宙形成時に放出された宇宙背景赤外線と密接な関係がある。この赤外線量によってガンマ線の到達距離は制限されるが、今回の観測結果は現在の推測値に上限を与えるもので、これにより初期宇宙形成に知見をもたらすと考えられる。またスターバースト銀河NGC253からTeV領域でガンマ線を検出した。系外ガンマ線天体ではジェットを伴う活動銀河核以外で初めて検出された種類の銀河である。活動銀河核でのガンマ線放射機構はジェット中での高エネルギー粒子加速観によるが、この天体はジェットを伴わない新しいガンマ線放射機構が存在していることを示す非常に重要な結果である。観測結果は放射領域が銀河全体に広がっており、高エネルギー宇宙線が銀河に付随したハローに満ちていることを示唆している。これは銀河外にも磁場が存在していることを示す。今後はさらに他のスターバースト銀河の観測を広げ、銀河中の高エネルギー粒子や銀河磁場の研究が推進されると考えられて非常に興味深い。
All Other
All Publications (6 results)